みなさんは、ゾンビがしゃべっているところを想像したことがありますか?
「ううう……」
「あああ……」
ゾンビといえば、こんな不気味な声を出しながら、ゆっくり歩いてくるイメージがありますよね。
でも、もしもゾンビが突然、
「脳みそ!」
としゃべり出したら、どうしますか?
びっくりして逃げるでしょうか?
それとも、思わず笑ってしまうでしょうか?
実は、1985年に公開されたホラー映画『バタリアン』には、言葉を話すゾンビが登場します。
しかも、このゾンビたちは走ることも、考えて行動することもできるのです。
これまで紹介してきたジョージ・A・ロメロ監督のゾンビ映画とは、ずいぶん違いますよね。
今回は、ちょっと変わったゾンビたちを通して、映画によってゾンビのルールが違うことや、言葉が通じることの意味について、一緒に考えてみましょう。
『バタリアン』(1985年)ってどんな映画?
怖いのに笑える、不思議なゾンビ映画
『バタリアン』は、1985年にアメリカで公開されたホラー映画です。
日本では1986年に公開されました。
原題は『The Return of the Living Dead(ザ・リターン・オブ・ザ・リビング・デッド)』。
監督はダン・オバノンです。
この映画の大きな特徴は、怖さと笑いが一緒になっていることです。
こうした作品はホラーコメディと呼ばれます。
もちろん、ゾンビは恐ろしい存在です。
でも、登場人物たちのあわてた様子や、想像もできない出来事が次々に起こるため、思わず笑ってしまう場面もあるのです。
物語は倉庫での失敗から始まる
物語の舞台は、アメリカの町にある医療用品の倉庫です。
そこで働くフランクとフレディという二人が、ある不思議なタンクを見つけます。
タンクの中には、なんとゾンビが入っていました。
ところが、ちょっとした失敗で、タンクの中から危険なガスが漏れ出してしまいます。
そして、恐ろしい出来事が始まるのです。
二人は何とかしようとしますが、問題はどんどん大きくなっていきます。
その様子は、まるで失敗が次の失敗を呼ぶ、ドタバタ劇のようです。
さて、この映画に登場するゾンビは、いったい何が違うのでしょうか?
『バタリアン』のゾンビは、どうしてしゃべれるの?
「脳みそ!」と叫ぶゾンビ
『バタリアン』には、脳みそ!と声を出すゾンビが登場します。
ちょっと変わった言葉ですよね。
実は、この映画のゾンビたちは、人間の脳を求めています。
なぜ脳を求めるのかについても、映画の中には説明があります。
しかし、今回は怖い話が苦手な人のために、詳しい説明は省きましょう。
大切なのは、このゾンビたちが言葉を使えるということです。
これまでのゾンビ映画では、ゾンビは人間のように会話できない存在として描かれることが多くありました。
ところが『バタリアン』では、自分の求めているものを言葉で伝えたり、状況に合わせて行動したりします。
これまでのイメージが変わってしまいますね。
しゃべれるゾンビなら、友達になれる?
ここで、一つ考えてみましょう。
もしもゾンビが、
「こんにちは!」
と話しかけてきたら、みなさんは返事をしますか?
言葉が通じるなら、仲良くなれるかもしれません。
でも、本当にそうでしょうか?
言葉を話せることと、相手を思いやれることは、必ずしも同じではありません。
例えば、人間でも自分の要求ばかり話して、相手の意見を聞かない人がいます。
言葉は通じているのに、気持ちは伝わっていないことがありますよね。
『バタリアン』のゾンビたちも、言葉を話せるからといって、人間と仲良くしたいわけではありません。
むしろ、自分たちの目的のために言葉を使うこともあります。
言葉を使えることと、相手を理解しようとすることは違うのです。
これは、私たちの日常生活でも考えられる大切なことですね。
ゾンビは走れるの? 映画によってルールが違う!
ロメロ監督のゾンビと比べてみよう
これまで、3本のゾンビ映画を紹介してきました。
『ナイト・オブ・ザ・リビングデッド』(1968年)
『ゾンビ』(1978年)
『死霊のえじき』(1985年)
この3作品では、ゾンビの多くがゆっくりと歩き、人間を襲う存在として描かれています。
『死霊のえじき』には、記憶や学習能力が残っているように見えるバブという特別なゾンビも登場しましたね。
しかし、『バタリアン』のゾンビたちは、もっと違った特徴を持っています。
まず、走ることができます。
そして、言葉を話したり、考えて行動したりすることもできます。
つまり、ゾンビといっても、映画によって特徴が違うのです。
前の映画で覚えた方法が通用しない?
『バタリアン』の面白いところは、登場人物がゾンビ映画を知っていることです。
実は、映画の中で『ナイト・オブ・ザ・リビングデッド』の話題が出てきます。
登場人物たちは、以前の映画で見たゾンビへの対処法を参考にしようとします。
ところが、その方法が通用しません。
えっ? 映画では、これで大丈夫だったのに!
そんな困ったことが起こるのです。
これは、少し面白い仕掛けですよね。
映画を作る人たちは、新しいゾンビ映画を作るとき、以前の作品とは違うルールを考えることがあります。
速く走るゾンビ。
道具を使えるゾンビ。
言葉を話すゾンビ。
ルールを変えることで、新しい驚きや怖さを生み出しているのです。
どうしてゾンビ映画には決まったルールがないの?
ゾンビは想像の世界の怪物だから
そもそも、ゾンビは映画や物語の中に登場する架空の存在です。
だから、すべての映画で同じルールにする必要はありません。
例えば、吸血鬼の映画でも、太陽の光が苦手な吸血鬼が登場する一方、違った特徴を持つ吸血鬼も登場します。
幽霊だって同じです。
人間に姿を見せる幽霊もいれば、声や物音だけで存在を知らせる幽霊もいます。
つまり、怪物には物語ごとの特徴があるのです。
ゾンビ映画も同じように考えると、わかりやすいですね。
ルールが変わると怖さも変わる
想像してみてください。
ゾンビがゆっくり歩いてくる場合は、距離を取る時間がありそうです。
でも、ゾンビが速く走ってきたらどうでしょう?
逃げる時間が少なくなってしまいます。
さらに、ゾンビが考えて行動できたら?
人間が隠れている場所を探したり、先回りしたりするかもしれません。
こうして考えると、ゾンビの特徴が変わるだけで、物語の怖さも大きく変わることがわかります。
怖い映画を作る人たちは、怪物の特徴を工夫して、見る人を驚かせているのです。
『バタリアン』は、どうして怖いのに笑えるの?
登場人物たちが、あわてすぎる!
この映画には、ちょっと変わった面白さがあります。
それは、登場人物たちが次々に失敗してしまうことです。
一つの問題を解決しようとすると、別の問題が起こります。
その問題を何とかしようとすると、さらに大変なことになります。
まるで、失敗がどんどん積み重なっていくようです。
例えば、みなさんも学校で、何か失敗した経験はありませんか?
忘れ物をしたことに気づいて、あわてて教室へ戻ったら、今度は別の物を忘れてしまった。
そんなことが続くと、困っているのに、あとから思い出すと笑ってしまう場合がありますよね。
『バタリアン』でも、登場人物たちの予想外の行動が、笑いにつながっています。
ただし、映画には本当に怖い場面もあります。
笑える映画だから、怖くないというわけではありません。
怖さと笑いは、どうして一緒にできるの?
お化け屋敷を想像してみましょう。
暗い通路を歩いていると、突然、大きな音がします。
びっくりして声を出したあと、友達と顔を見合わせて笑ってしまうことがありますよね。
怖いと感じたあと、安心して笑う。
そんな経験がある人もいるでしょう。
ホラーコメディでは、怖い場面とおかしな出来事を組み合わせて、独特の面白さを作っています。
『バタリアン』には、音楽や登場人物の会話にも、そんな工夫があります。
ゾンビが怖いだけではなく、どこか変わっていて、思わず驚いたり笑ったりしてしまうのです。
『バタリアン』と『死霊のえじき』の違いは?
同じ1985年でも、ゾンビの描き方が違う
実は、『バタリアン』と『死霊のえじき』は、どちらも1985年に作られた映画です。
ところが、作品の雰囲気は大きく違います。
『死霊のえじき』では、科学者がゾンビについて研究していました。
特に、バブというゾンビが人間の記憶や感情を持っているのかが、重要なテーマになっています。
一方、『バタリアン』では、話したり走ったりするゾンビたちが次々に登場します。
人間たちは、その予想外の行動に振り回されてしまいます。
どちらの映画にも、人間のような行動をするゾンビが登場します。
でも、一方は人間らしさを考える物語。
もう一方はゾンビのルールを変えることで、恐怖と笑いを生み出す物語。
そんな違いがあると考えられます。
『バタリアン』はロメロ作品の続編なの?
ここで、映画の歴史についても少し説明しましょう。
『バタリアン』の原題には、『リビングデッド』という言葉が入っています。
前に紹介した『ナイト・オブ・ザ・リビングデッド』と名前が似ていますね。
実際に、この2作品には制作上のつながりがあります。
しかし、『バタリアン』はジョージ・A・ロメロ監督が作った3部作の正式な続編ではありません。
別の監督が、違った発想で作った作品なのです。
同じゾンビ映画でも、作る人によって新しい世界が生まれる。
それも、映画の面白いところですね。
ホラー映画が苦手でも『バタリアン』を楽しめる?
映画を見る前に知っておきたいこと
『バタリアン』は、怖さと笑いを組み合わせた作品です。
しかし、子ども向けに作られた映画ではありません。
ホラー映画特有のお約束、血が出る場面や、ゾンビが人間を襲う場面、刺激の強い映像があります。
また、大人向けの言葉や表現も含まれています。
そのため、小学生やホラー映画が苦手な人に、気軽な視聴はおすすめできません。
映画を見る場合は、保護者と相談して、利用する配信サービスなどの年齢区分を確認してください。
もちろん、映画を見なくても大丈夫です。
この記事を読んで、ゾンビ映画にはいろいろなルールがあると知ることも、立派な映画の楽しみ方です。
まとめ|しゃべれるゾンビから何を学べる?
『バタリアン』には、これまでとは少し違ったゾンビが登場しました。
言葉を話したり、走ったり、考えて行動したりするゾンビたちです。
そんな姿から、3つのことを考えることができます。
一つ目は、言葉が通じることと、仲良くできることは違うということ。
二つ目は、映画によってゾンビのルールが違うということ。
三つ目は、怖さと笑いを組み合わせることで、映画に新しい面白さが生まれるということです。
では、最後に一つ質問です。
もしも、みなさんが新しいゾンビ映画を作るとしたら、どんなゾンビを登場させたいですか?
歌を歌うゾンビでしょうか?
学校へ通うゾンビでしょうか?
それとも、人間と友達になりたいゾンビでしょうか?
自由に想像してみてください。
映画の怪物には、必ずしも決まった形があるわけではありません。
だからこそ、作る人のアイデアによって、面白い物語が次々に生まれるのです。
『バタリアン』は、ゾンビ映画のルールを変えることで、新しい怖さと笑いを生み出した作品です。
ホラー映画は、怖いだけではありません。怪物の特徴や物語の工夫を知ることで、映画を見る楽しさがもっと広がっていくのです。