みなさんは、友達からこんな話を聞いたらどうしますか?
「あるビデオを見ると、7日後に怖いことが起こるんだって」
きっと「そんなのウソだよ!」と思うでしょう。
でも、もし何人もの友達が同じ話をしていたら?
「本当にそんなビデオがあるのかな?」と、少し気になってしまうかもしれません。
1998年に公開された日本のホラー映画『リング』は、そんな不思議なうわさから始まる物語です。
この映画には、山村貞子(やまむらさだこ)という、とても有名な怖い存在が登場します。
でも、『リング』がおもしろいのは、怖い幽霊が出てくることだけではありません。
なぜ人はうわさを信じてしまうのでしょうか?
どうして、見えないものを怖いと感じるのでしょうか?
今回は『リング』を通して、ホラー映画の怖さのひみつを一緒に考えてみましょう。
『リング』ってどんな映画?
日本で作られた有名なホラー映画
『リング』は、1998年1月31日に公開された日本のホラー映画です。
原作は、作家の鈴木光司(すずきこうじ)さんが書いた同じ名前の小説です。
映画の監督を務めたのは、中田秀夫(なかたひでお)さん。
主人公の浅川玲子(あさかわれいこ)を演じたのは、俳優の松嶋菜々子(まつしまななこ)さんです。
映画の上映時間は95分。
『リング』は日本のホラー映画の中でも広く知られ、海外でも注目されました。
そして2002年には、アメリカで『ザ・リング』というリメイク映画も作られています。
日本の怖い物語が、海をこえて世界の人たちにも知られるようになったのです。
どんなお話なの?|呪いのビデオの謎
ビデオを見ると7日後に死んでしまう?
物語は、ある不思議なうわさから始まります。
「そのビデオを見ると、7日後に死んでしまう」
そんな話が若い人たちの間で広がっていました。
テレビの仕事をしている浅川玲子は、そのうわさについて調べ始めます。
ところが、調査を続けるうちに、玲子自身も問題のビデオを見てしまうのです。
ビデオには、何を意味しているのかわからない奇妙な映像が記録されていました。
玲子は、別れた夫の高山竜司(たかやまりゅうじ)と協力して、ビデオの謎を解こうとします。
なぜ、こんなビデオが存在するのでしょうか?
いったい、だれが作ったのでしょうか?
そして、本当に呪いを解く方法はあるのでしょうか?
物語は、少しずつその謎に近づいていきます。
そもそもビデオテープって何?
昔はスマートフォンがなくても動画を見ていた
『リング』を理解するために、まずビデオテープについて知っておきましょう。
みなさんは、YouTubeなどで動画を見たことがありますよね。
今ではスマートフォンやタブレットがあれば、いろいろな動画を楽しめます。
でも、1998年ごろは今とは違いました。
当時は、ビデオテープに映像を記録して、ビデオデッキという機械で再生する方法が広く使われていました。
ビデオテープは、四角い箱のような形をしています。
その中には、映像や音を記録するための細長いテープが入っていました。
映画を見るときには、レンタルビデオ店でテープを借りることもありました。
つまり、『リング』に登場するビデオテープは、当時の人たちにとって身近なものだったのです。
普通の道具が怖いものに変わる
ビデオテープは、本来なら楽しい映画や家族の思い出を記録するためのものです。
でも『リング』では、それが怖い出来事の原因として描かれています。
ここが、この映画の大きな特徴です。
いつも使っている普通の道具が、突然怖いものに変わってしまう。
そんな変化が、観る人の心を不安にさせるのです。
なぜ『リング』はこんなに怖いの?
① うわさが本当かどうかわからない
学校でも、不思議なうわさを聞くことがあるかもしれません。
「夜になると音楽室からピアノの音が聞こえるらしいよ」
「だれもいない教室に、人の影が見えたんだって」
そんな話を聞くと、ちょっと気になりますよね。
でも、よく考えてみましょう。
その話をしている人は、本当に自分で確かめたのでしょうか?
もしかしたら、別の友達から聞いただけかもしれません。
『リング』では、こうした本当かどうかわからないうわさが、怖さの始まりになっています。
そして、うわさが本当なのか確かめようとすることで、物語が動き出します。
人は正体がわからないものほど、いろいろなことを想像してしまうのです。
② 7日間という時間が怖い
『リング』には、もうひとつ特徴があります。
それは「7日後」という時間の決まりです。
例えば、明日が大切なテストだったらどうでしょう。
「あと1日しかない!」
そう思うと、少しあせってしまいますよね。
映画でも、主人公には限られた時間しかありません。
時間が少しずつ過ぎていくことで、観ている人もドキドキしてきます。
まだ何も起こっていないのに、これから何かが起こりそうで怖い。
これを映画ではサスペンスと呼ぶことがあります。
『リング』は、ただ幽霊を見せるのではなく、時間を使って怖さを作っているのです。
③ 静かな場面がかえって怖い
ホラー映画には、大きな音で人を驚かせる作品もあります。
でも『リング』では、静かな場面も大切な役割を持っています。
何も起こらない部屋。
静かに映っているテレビ。
人の気配が感じられない場所。
そんな場面を見ていると、次に何が起こるんだろう?と考えてしまいます。
実は、この想像する時間が怖さを大きくしているのです。
映画を作る人は、音や映像だけでなく、静けさも上手に使っています。
怖い映画が苦手な人は、映像を無理に見なくても大丈夫。
映画の作り方を知るだけでも、ホラーの仕組みを学ぶことができます。
貞子ってどんな存在なの?
長い黒髪の女性が怖く見える理由
『リング』に登場する山村貞子は、日本のホラー映画を代表する存在のひとりです。
長い黒髪が顔をおおう姿は、とても有名になりました。
でも、なぜ顔がよく見えないだけで怖く感じるのでしょうか?
私たちは、相手の顔を見て気持ちを想像しています。
笑っていれば楽しそう。
泣いていれば悲しそう。
でも、顔が見えなかったらどうでしょう?
怒っているのか、悲しんでいるのか、何を考えているのかわかりません。
そのため、不安に感じることがあります。
貞子の姿は、そんな人間の気持ちを利用した怖い表現だと考えられます。
貞子は最初から怖い存在だったの?
ここで、ひとつ考えてみましょう。
貞子は、なぜ人々から恐れられる存在になったのでしょうか?
映画では、彼女の過去に関わる謎も描かれています。
その秘密を知ると、貞子に対する見方が少し変わるかもしれません。
ただ怖い存在として見るだけでなく、その人物にどんな出来事があったのかを考えてみる。
これも、映画を考察する楽しさのひとつです。
『ポルターガイスト』と『リング』は何が違うの?
どちらもテレビが怖さにつながっている
前回紹介した『ポルターガイスト』(1982年)を覚えていますか?
『ポルターガイスト』では、普通の家で不思議な出来事が起こり、テレビも重要な役割を持っていました。
『リング』にも、テレビやビデオが登場します。
実は、この2作品には共通点があります。
それは、私たちの身近にあるものを使って怖さを生み出していることです。
ただし、怖さの作り方は少し違います。
『ポルターガイスト』では、家の中で物が動くなど、目の前で起こる不思議な現象が印象に残ります。
一方、『リング』では、ビデオに隠された謎や、迫ってくる時間が怖さを生み出しています。
同じテレビが登場しても、映画によって怖がらせ方が違うのです。
『リング』から考える、うわさの怖さ
うわさは、どうして広がるの?
ここからは、映画を通して考えられることを紹介します。
『リング』の物語を動かしているのは、呪いのビデオについてのうわさです。
でも、うわさは映画の中だけのものではありません。
今ではSNSなどで、いろいろな情報があっという間に広がります。
中には、本当かどうかわからない話もあります。
例えば、この動画を見ないと不幸になる、このメッセージを友達に送らないと悪いことが起こるといった文章が届いたらどうでしょう。
怖くなって、だれかに送ってしまう人もいるかもしれません。
でも、そんなときこそ考えてほしいことがあります。
本当に信じられる情報なのかな?
だれが言い始めた話なのかな?
友達を怖がらせることにならないかな?
確認できない怖いうわさを、無理に広める必要はありません。
心配になったら、家族や先生など、信頼できる大人に相談しましょう。
『リング』は、うわさが人の心にどんな影響を与えるのかを考えるきっかけにもなる映画です。
ホラー映画が苦手でも楽しめる?
まずは物語を知るだけでも大丈夫
『リング』には、突然驚かされる場面や、死に関わる怖い表現があります。
ホラー映画を初めて観る小学生や、怖い映像が苦手な人には、刺激が強いかもしれません。
そのため、無理に映画を観る必要はありません。
まずは、この記事のような解説を読んで、物語の仕組みを知ることから始めてみましょう。
実際に観たいと思ったら、保護者の人と相談してください。
また、映画の中の呪いのビデオは、物語のために考えられた設定です。
現実に動画を見たからといって、映画のような呪いが起こるという科学的な根拠はありません。
怖いと感じたら、途中で観るのをやめても大丈夫です。
映画は、自分のペースで楽しむものですからね。
まとめ|本当に怖いのは幽霊だけなの?
『リング』は、呪いのビデオをめぐる不思議な出来事を描いたホラー映画です。
でも、怖さの理由を考えてみると、いろいろな発見があります。
うわさを聞いて不安になる気持ち。
正体のわからないものを想像する気持ち。
時間が迫ってくることで感じるドキドキ。
こうした人間の心の動きが、映画の怖さにつながっています。
そして『リング』には、謎を解こうとする人々の姿も描かれています。
怖いものから逃げるだけではなく、その理由を知ろうとすることも、物語の大切な部分なのです。
最後に、みなさんに質問です。
「もし友達から怖いうわさを聞いたら、あなたはすぐに信じますか? それとも、本当かどうか確かめますか?」
この質問には、いろいろな答えがあると思います。
ホラー映画は、ただ怖がるためだけのものではありません。
映画を通して、自分の気持ちや、情報との付き合い方について考えることもできるのです。